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2023/11/04 17:31

当店はクラシコイタリアの中でも本格的なビスポークモデルの取り扱いを主力としていますが、同時に本格クラシコの既成ブランドも非常に得意としております。

一般的なUSED品の世界とは異なり、手業に頼るクラシコイタリアは既成ブランドよりビスポークブランドの方が高く取引される傾向にあります。
裏を返せば、クオリティの高いクラシコ既成ブランドは色々な意味で『狙い目』となっています。

中でも”オラッツィオ・ルチアーノ”は、その本格的なナポリ仕立てに対し比較的リーズナブルな価格となっています。
ことヴィンテージモデルはUSEDという価値基準を超えた評価を得ており、コストパフォーマンスに優れたナポリ仕立ての筆頭に挙げられます。



ヴィンテージタグには『La Vera Sartoria Napoletana』(通称: ラベラ)と表記されていますが、これが旧タグ(現ルチアーノ)です。※本文では旧ラベラ=ルチアーノとしてご説明差し上げます。

当店はこのラベラ名義の在庫が充実しております。
ヴィンテージ・ラベラは手間暇かけたハンドメイド(手業)”らしさ”を前面に出したナポリ仕立てが特徴です。
現ルチアーノのモノづくりは構築的なテイストを強めていますので、手縫いによるハンド感を堪能したいのであれば、ラベラ名義のものを探すのが間違いないでしょう。



ラベラはナポリの伝統的な仕立てを踏襲しつつグラマラスなハウススタイルで、今着ても非常に格好良いディティールです。

大まかな特徴としては
・強めのメリハリ感
・モダン(現代的)でスタイリッシュなテイスト
・ナポリらしいハイゴージで目線の高いジャケット
・シャツのような肩回りのハンドメイド感溢れる表情
・パンツはクラシックディティール

などが挙げられます。

スーツに関しては、ジャケットはメリハリ感がありながらハンドメイドシャツのようなふんわりとした袖付け。対してパンツはストレートで深めのプリーツが入る仕様が多く、構築感と抜け感のバランスが非常に整っている、と言えます。

”良い”ナポリ仕立ては、そのリラックスした抜け感とは裏腹に3次元的な立体感・構築感が垣間見える仕立てとなっています。
ただただカーディガンのような、生地感に頼ったテロンとしたジャケットとは異なり、満開の花のような『ボリューミーさ』が着用時に漂います。
こういった『イタリア=カーディガンみたいな仕立て』のイメージは生地の先入観からくる勘違いなのですが、ラベラは前述の”良い”ナポリ仕立ての特徴がはっきりと出ています。

以前俳優の菅田将暉さんにご着用頂いた個体は、ラベラとルチアーノのダブルネームとなっており、構築感とナポリ的な色気を兼ね備えた、時代の過渡期を感じさせる個体でした。




ラベラはそのシャツのようなドレープ感を際立たせるべく梳毛(そもう)生地を採用することが多く、表情豊かで躍動感あふれる”動の美”を追求しています。
※ラベラはアンコン仕立ての火付け役としても有名で、アイコニックな仕立てを普遍的な仕立ての一つとして定着させた功績も大きいものがあります。



その価格帯もあって本格クラシコの入門的立ち位置で語られますが、ナポリ仕立ての本質を捉えた仕立てであることは間違いなく、ワードローブとして相応しい1着となるでしょう。

特にクラシックなスーツやジャケットをスタイリッシュに着こなしたい方にとって、モダン要素を上手く取り入れたラベラはバランス感に優れています。

注意点としては、ふわりとした甘い仕立ての通り、ブリティッシュ系やアメトラのような頑強なスーツではありません。
これは他のスーツ/ジャケットにはないドレープを表現するための強みであり、また弱みでもあります。
特に内装(裏材)に関してはヴィンテージモデルは傷んでいるものも多いため、場合によっては張替えをお勧めしています。
※スーツ・ジャケットにおいて内装は消耗品として捉えられていますので、長年着用する場合は交換前提の構造です。

ハードな使い方はせず、ローテーションの中にうまく組み込んで活用したいものです。

香り立つようなハンドメイド感を堪能したい方にとっては、アンダー15万でナポリの職人の手業による作品が手にできるのはプライスレスです。

ハンドメイドスーツと言うのはもちろんのこと、やはり伝統と技術、センスに裏打ちされた専業ブランドならではのスタイリングは見物。
本格クラシコの1着目にヴィンテージ・ラベラは非常に良い選択です。

Artigiano-Tokyo