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2023/05/19 01:59

当店は数年前まで、

「クラシコイタリアのリサイクルショップ」
という肩書きで営業を続けてきました。


【旧店舗: 東京駅八重洲口で5年営業し、銀座に移転しました】

当店の創業は2000年代初頭で、
当時はヴィンテージのクラシコ品や
古きクラシコを評価するという
価値観が世の中にありませんでした。

その反面リサイクルや古着という表現に
非常にもやもやとした気持ちを心に抱えながら
運営を続けてきたのも事実です。

リサイクルや中古・古着というと、
日本ではどうしても誰かのお下がりや
プロパー(正規価格)で買えない人がモノを安く
買う”手段”というイメージがついて回るからです。

当店は大好きなクラシコを多くの方に知って頂き、
そしてより身近に感じて頂くための”手段”として
お値打ち感あるUSED品を扱ってまいりました。
しかし「所詮は中古」「もっと安くならないのか」
という言葉を頂くたびとても心が痛んでおりました。

私たちがこれらの商品を取り扱い続けるのは、
クラシコの素晴らしさや過去を生きた仕立て職人への愛、
そして洋服を着て心が豊かになる体験を伝えるのが目的です。
クラシコウェアを”ただ安く”ご提供することは
本来の目的ではなかったからです。

手段と目的が逆になって伝わってしまう現実に
日々迷いながら数年間を過ごしてまいりました。






しかし東京銀座店がヴィンテージウォッチ専門店
「White Kings」とコラボを始めたのをきっかけに、
クラシコイタリアが内包する『受け継ぐ-SUCCEED』
という価値観をお伝えできる土壌が整い、
当店が届けたいことがようやく現実味を帯びてきました。

今回は、当店が『クラシコイタリアの洋服が
単なるリサイクルや中古の類とは全く異なる』
と言い切る理由について、ご説明していきます。


①徹底したハンドメイド、存在そのものが個性である。


クラシコイタリアは全て職人の技術だけで
その仕立て品質が守られています。
高価で最新鋭のミシンやCADソフトは
そこにはありません。
合理化とは真逆の世界。
哲学を宿すモノ作りは現代社会において
稀有な存在となってきました。

クラフトマンシップと共に、
ハサミを握り、糸を紡ぎ、アイロンをかける
人の息吹を感じる洋服は存在そのものが
奇跡だと考えています。



②TPOを重んじた着用文化。傷んだ個体が少ない。


一般的な古着はガシガシ使い込まれて
様々な汚れや傷みが発生している場合があります。
古着のスーツやジャケットというと裂けていたり
ウールが乾燥しカサカサなイメージもあるのでは。
それはそれで良いエイジング(経年変化)となる
ジャンルの洋服もありますがクラシコイタリアは
繊細な上質さが武器のクラシックウェア。
雑に扱えばたちまち破れてしまいます。

しかしクラシコイタリアでそういった
状態に難がある個体はあまり出回りません。
これは洋服をTPOに合わせて使い分ける価値観が
クラシコの文化層に身についているからです。

自分にとって大切な人をいたわるのと同じように
好きなモノだからこそ休ませたり、丁寧に接する。
当たり前のようで多くの人はなかなか
実践出来ていないのではないでしょうか。
そういった文化背景も踏まえ、
目の前に現存する洋服がとても尊いモノである。
と当店は考えております。



③『受け継ぐ』ことが大前提となった作り。


一般的なスーツは消耗品の側面があります。
特に日本でのスーツは仕事着であり、
労働の象徴のようなイメージがあります。

クラシコイタリアの洋服は思想や構造を含め
次世代に受け継ぐことが前提となった仕様です。
例えば仕立て品の多くは袖先ボタンのうち、
一番奥にあるボタンが飾り(眠りボタンと言います)
となっており、ボタンホールの穴が開いていません。
これは将来誰かに譲るときにボタンの位置を
移動できるようにしているためです。



他にも、生地の縫い代がたっぷりととられており
仕立てた本人の体型変化だけでなく、
例え着用者が変わっても仕立て直せる余力が
服に残されているのが大きな特徴です。

自身がその洋服のレガシー(歴史)を受け継ぐという
のがクラシコのウェアの本質です。
畏敬の念をもって洋服を大切にしたいものです。



④失われゆく技術、そして遺作。


イタリアには世界を代表する伝説的な
仕立て職人が多数存在しますが、
いずれも高齢で後継者不足に悩まされています。

非効率で手間がかかり高額な価格を以てしても
職人にとっては決して見合う労働対価でない
という現実がありました。
現在は最盛期から10分の1以下まで職人の数を
減らしているとされます。
また、一子相伝でなくとも、天才とされる職人の
技術を継承できる人間は殆ど存在しません。

今この場にある洋服たちの多くは
もう誰にも仕立てることができません。
職人が生きた証、そのものだからです。

古いクラシコウェアは益々貴重で
大切にされる存在になっていくでしょう。



⑤今はなき最高の素材


ヴィンテージモデルは現行では見られない
驚くべき仕立てや素材を採用していること
があります。

人件費の変動、技術のみならず素材の枯渇や
効率化の波に押されて消えていった素材たち。
今にはない最高の素材による最高の仕事が
そこにあります。

限りある資源を無駄にしないという現代の
新たな価値観にもマッチした洋服である
事は間違いありません。

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古きもの=価値が目減りするもの。
そういった既存の価値観を超越したものが、
人の手によって生み出されたクラシコウェア
の『着方』であり、大きな魅力でしょう。

究極的には洋服は消耗品ですが、
その価値は決して目減りするものではないと
私どもは本気で考えております。

受け継ぎ受け継がれ、価値を帯びていくものもある。
当店はそう信じてUSED&VINTAGEのクラシコを
扱ってまいります。

Artigiano-Tokyo Ginza