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2023/05/08 18:47

Artigiano-Tokyo Ginzaです。

まず最初に、クラシコイタリアは
『ステータス性を求めてブランド買いする洋服ではない』
という点を真っ先にご理解頂く必要があります。

これはクラシコに限らずスーツ全般に言えることでもあります。
憧れや知名度だけでブランド選びをすると、
購入後きっと後悔することになるでしょう。
場合によっては自分はスーツやジャケットが似合わない
と思い込み、興味を失ってしまうかもしれません。

「リベラーノの評判が良いから着てみたい」
「007が好きだからブリオーニが欲しい」
自身が着たい憧れを追い求めるのは素晴らしいことですが、
スーツは一般的な洋服以上に体型に 合う/合わないが
はっきり出るということは、忘れてはいけません。

イタリアのスーツやジャケットというと
「軽くてナチュラルなシルエット」と思われがちです。
しかし多くの方が思っている以上に、
そのスタイルにはバリエーションがあります。
イタリア自体が、元々小国の集合体だからです。

貴方はスーツを通してどのように見られたいでしょうか。
どのような要素を重視したいでしょうか。

生真面目さや品格でしょうか?
活動的なスタイリッシュさ?
大人の色気でしょうか?
それとも誰とも被らない個性でしょうか?

ご自身の『なりたい自分』がどんな姿なのか?
を知ると、クラシックウェアはぐっと選びやすくなります。

今回はそのヒントとなるよう、
どのブランドが、どんなスタイルで、
どのような人をターゲットにしているのか?
を簡単に解説いたします。

様々なスタイルを見て・着て・実際に体感頂き
ぼんやりとしていた輪郭をはっきりとさせることで、
最高の1着に出会えるお手伝いができればと思います。



『上品で、コンパクト。あふれ出る気品』
①  Attolini(アットリーニ)

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スタイル: 構築的
仕立て地域: ナポリ(イタリア南部)
イメージ: 上品・貴族的・知的
当店価格帯: ¥120,000~¥200,000
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世界三大既成クラシコとされるブランドの一角。
日本では路面店がないことからBrioni(ブリオーニ)
やKiton(キートン)と比べ知名度が低いですが、
3大ブランドの中でも特に仕立て技術が高い
と評されることも多いブランドです。



スタイルは3大ブランドの中で最もシャープでコンパクト。
モダンさもあり、若い方が着てもさまになるのが特徴です。
首元から滑り落ちるような美しいコンケープドショルダー
(弓なりの肩のライン)が持ち味。
構築的でありながら、軽い着心地のナポリ仕立てです。
華やかなフロントライン(前裾)は、貴族的な上品さもあります。



既成紳士服の最高峰の一角ということもあり
イタリア最高水準の職人たちを抱えています。
ハンドメイド(職人の手技だけで仕立てる)の既製品にも関わらず、
それを高い品質で量産にのせてしまっているのが恐ろしいところ。

パターン(型紙)を非常に研究しており、
誰に着せても無理がなく美しいシルエットが出ます。
当店でもっとも取扱い数の多いブランドで、
オーナー自身が一番好きな既成ブランドでもあります。



クラシコイタリアでは王道的な存在で、
特徴的ながら派手すぎないバランス重視型。
クオリティと価格のバランスも良く、
迷ったらまずはこれ、といったポジションです。


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◎向いているタイプ/シーン:
英国的な構築感が好き / 真面目さの中にも遊び心が欲しい
マナーや知性を重んじたい / 細身体型

△あまり向いていないタイプ/シーン:
もっと力強さが欲しい / 柔らかいシルエットが好き
かなり恰幅がよい
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『グローバルでコンチネンタル。圧倒的知名度』
②  Brioni(ブリオーニ)


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スタイル: 構築的
仕立て地域: ローマ(イタリア中部)
イメージ: 威厳・オーラ・真面目
当店価格帯: ¥100,000~¥200,000
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スパイ映画の影響もあって、
世界でもっとも有名なクラシックブランドが
ローマのブリオーニ。

その知名度とは裏腹に、デザインは極めて中庸。
3大ブランドの中では一番保守的なシルエットで、
好き嫌いがないデザインと言えるでしょう。



「普遍的なアイテムを最高の仕事で形作る」
ことに長年定評があり、威厳とオーラある洋服を
丁寧に仕立て上げます。
人によっては面白みに欠けると思われるかもしれませんが、
どのような場で着ても間違いないことから、
政治家、指導者、金融マンなど国際的なバランス感覚に
優れた人に好まれる傾向があります。



誰もが知る超ビッグブランドであるゆえ、
近年はモードなラインナップも増えました。
年代やモデルでデザインに揺らぎがありますので、
必ず試着をお勧めしたいブランドです。
※最近は再びクラシック回帰の傾向もあります。

イタリアらしい優しい着心地の中に、
ピリッとした緊張感を秘めたスタイル。
スーツを自分を奮い立たせる”戦闘服”と位置付ける方、
人の上に立つ者としての責任や威厳を体現したい方にとって
ブリオーニは最良の選択となるはずです。

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◎向いているタイプ/シーン
トラディショナルが好き / 力強いオーラが欲しい
保守的な環境や職場 / 筋肉質な体型

△あまり向いていないタイプ/シーン
個性を出したい / 柔らかいシルエットが好き
威圧感を与えたくない
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『ラグジュアリーの極致。柔和な色気と品格』
③Kiton(キートン)


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スタイル: ドロップシルエット
仕立て地域: ナポリ(イタリア南部)
イメージ: 貴族的・余裕・曲線
当店価格帯: ¥150,000~¥250,000
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3大ブランドでも特にラグジュアリーな素材で
仕立てを行うブランド。
富裕層を意識した路線に振り切っており、
ある意味 3大ブランドで最も尖った仕立て屋でしょう。
金額も一番高価です。




生地は貴族の遊びのような贅の限りを尽くした織物ばかり。
まるでカーディガンのようだと形容される着心地は、
迂闊にミシンで縫うと破れてしまうような繊細な生地です。
これをナポリ伝統の手縫い技術で、
張りを持たせながら絶妙なテンションで縫い上げ
仕立服に落とし込んでいます。
まさに、Kitonにしかできない素材使いでしょう。



シルエットは体をやさしく包み込むような
ドロップスタイル。
肩先が落ちているようで落ちていないという
何とも不思議なシルエットです。

胸周りにしっかりと重心を持たせ、
リラックス感の中に風格があるのも特徴。
一度着ると病みつきになる着心地とあって、
リピーターが多いブランドです。

服のコンセプトや構造的にもやせ型より
恰幅が良い方・骨格がしっかりしている方向けです。
ここぞという日にスーツやジャケットを着たい方、
世俗から離れた非日常感を味わいたい、
大人の余裕を演出したい方にはベストマッチです。

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◎向いているタイプ/シーン
柔らかい仕立てが好き / 面白い生地や色柄が好き
プライベートで活用したい / 恰幅が良い

△あまり向いていないタイプ/シーン
頻繁に着用したい / 構築的なシルエットが好き
やせ型(胸板が薄い)
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ここに書かれていることが全てではありません。
年代やモデル・仕立てた職人によっても
スタイルは異なります。
一見自分には合わないように思うブランドでも
ピッタリの個体があったりするものです。
そういった新しい発見も含め、
当店で是非見て、聞いて、着てみて下さい。

当店はクラシコイタリアを知らない方もウェルカムです。
ご来店にあたり気負いしたり着飾る必要もありません。
知らないことは恥ずかしいことではありませんし、
誰もが初めは何も知らないところからスタートします。

次回は本格クラシコの中でも予算感を意識した
ブランドをご紹介してまいります。

Artigiano-Tokyo Ginza